今年の当院の診療は本日が最終日です。
私はわりといつも淡々と日々を送っていて、節目節目に何か総括するとか、将来計画を立てるとかといった作業がどちらかと言えば苦手な方なのですが、今年はさすがに特別な年だったように思うので、来年に向けてここで振り返っておきたいと思います。
NIPTのドタバタ
さて、昨年末から振り返ると、ちょうどクリスマスの時に、長い間放置されていたNIPTの実施施設登録申請に関して、日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会から問い合わせが来たのでした。この時、2020年は年初から動かないといけないが、前途多難だなあと思っていたのでした。
これはクリスマスプレゼントなんでしょうか?「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会より文書が届きました。 – FMC東京 院長室
開けて2020年は、これへの返答(及び意見書)の送付、そして登録部会とのやり取りから始まったわけです。そしてまたご丁寧に、私の誕生日に文書が届いたのですが、結論から言うと肩透かしを喰らった形になったのでした。
『旧』施設認定・登録部会から届いた文書への反論を記します。 – FMC東京 院長室
そして、6月には、もう愚痴るしかないという状況に追い詰められていました。愚痴りつつもこの時点でまとめた記事が以下のものです。
ちょっと愚痴らせてください(現在のNIPT検査体制のあり方の問題点について、ブログ内記事を追うのが大変だと思われる方に、まずはここを読んでもらいたい) – FMC東京 院長室
その後、日本産科婦人科学会が指針を改定し、小規模施設でも検査を可能にするというニュースが入ってきました。この時点では、一瞬少し光明が見えた気がしたのですが、その認識は誤りだということがすぐにわかったのです。
【続報】新型出生前診断の指針改定 何が動いた?これからどうなる?根本的な問題は解決されたのか? – FMC東京 院長室
NIPTの指針、実施体制に関しては、ここからまたドタバタが始まりました。学会は一応まとまる形になったものの、これに異を唱える意見が噴出したのです。
新型コロナウイルスの流行
この間、世間の話題は、新型コロナウイルスの蔓延で持ちきりでした。1月末に国内感染者の報告が出始め、2月にはダイヤモンドプリンセス号での集団感染が発生、そして4月には緊急事態宣言の発令と、たいへんな騒ぎになりました。この頃には受診控えも増え、医師数を減らしても予約枠が埋まらなかったり、キャンセルが相次いだりと、正直クリニックを存続できるのかという心配をしなければならないぐらいでした。以前行っていたグループでの遺伝カウンセリングセッションも、これ以降再開できなくなっています。
それでなくても、一人ひとりの受診者さんにじっくり時間をかけて行う診療を行っていたため、予約キャンセルが出て枠が空いたりすると、損害は大きいのです。どんどん増えてきたほとんど説明もせず、次々にただ採血だけを行って稼いでいる認定外無頼クリニックの盛業を横目に、忸怩たる思いを噛み締める日々でした。
変化への対応
新型コロナの流行は世界規模のものなので、国内のみならず世界中で、開催される予定だった学術集会が軒並み中止に追い込まれました。そんな中、多くの学会がリモート対応に切り替え、バーチャル学会という形でできるようになったことは、素晴らしいことだったと思います。学術集会だけでなく、テーマを絞った勉強会的なものも、ZOOMなどの仕組みを使って多く開催されるようになりました。これにより、自宅にいながらにして世界中の専門家とつながり、最新の情報・学びを得ることができる機会が提供されたことは、たいへん素晴らしい変化でした。人は、危機的状況においても次の工夫ができるものなのだという点については、勇気を得ることができたと思います。私たちが開催している専門家向けの勉強会『FMC川瀧塾』も、クリニックで少人数制・対面で行っていた型式から、遠隔配信システムを使った全国規模の勉強会に変革することができました。
実は昨年末の段階で、2020年にはプライベートで明るい話題が連続することが予想されていて、この年を迎えることをすごく楽しみにしていました。そしてその一つが上に記載した諸々のすっきりしない問題にもまれる中で、実現しました。このブログでは、プライベートな話題には触れずにきましたし、今後もそのつもりなので詳細は記しませんが、このことがなかったら、心が折れそうな日々を乗り切ることができなかったのではないかと感じます。
後半へ続く