NIPTの改定案に対するパブリックコメントの募集。あと1週間で締め切られますが、その周知徹底は十分なのでしょうか。広い範囲からの意見が集められるでしょうか。
これに関して、甚だ疑問に感じさせられることがありました。
因みにパブコメの案内は以下↓
先日、私の恩師である、順天堂浦安病院院長の吉田幸洋先生の退職記念祝賀会(産婦人科教授職を退任されるのであって、院長職は今しばらく継続されるようです)があり、その席で久しぶりにお会いする多くの産婦人科学教室の先輩後輩たちとお話しする機会がありました。私は教授まであと一歩の地位を投げうって、大学を飛び出して10年になりますので、私の現況についても皆さん興味を持たれており、いろいろな方々から声をかけていただきました。今の私は今回の日産婦のNIPT認定施設の改定案のことで頭がいっぱいで、この話題に触れないわけにはいかないのですが、話していて気がついたことは、産婦人科のお医者さんたちの中でも、この問題はあまり知られていないという衝撃の事実でした。
学会が何か改定案を出したことはなんとなく皆ご存知ではあるのですが、その詳しい内容については、ほとんど理解しておられる方はおられず、私が説明するとびっくりされる方も何人もおられました。あまり自分たちには関係が薄いことのように感じておられるようでした。
無理もないことなのかもしれないとも感じました。産婦人科の日常診療全体の中で、出生前検査の件で対応に困るような経験をすることはあまり多くはないのです。婦人科専門でほとんど妊婦と接することのない医師もおられます。妊婦と接しているお医者さんでも、多くの妊婦さんはまだ普通に健診を受けていれば、何か問題があれば知らせてもらえるだろうし、きちんと見てもらえていると思っていますので、このことに関して質問を受けたりするケースもそれほど多くはないのです。そして、質問を受けてもなんとなく過去の検査方法などでお茶を濁して終わっていることも多いと思われます。そもそも胎児の異常自体、それほど頻繁に遭遇するものではないので、専門施設にいないとあまり見たことがないというお医者さんも多いと思います。
また、以前から何度か言及してるように、胎児の異常を発見する手段の存在については、積極的に知らせる必要はないというのが日本産科婦人科学会の基本方針です。学会が出している診療ガイドラインにも、こういった種類の検査の存在については、「尋ねられたら」答えると記載されています。尋ねられない限り、知らせる必要がないとされているのです。諸外国のガイドラインとの大きな違いです。
日本産科婦人科学会がこの件についてパブリックコメントを募集していることも、ご存知ない方が多いようでした。産婦人科のお医者さん(みんな産婦人科専門医です)ですら、この件についてこれほど知らないでいるものを、一般の方々がどの程度知っておられるのだろうか、私たちはこの問題は社会にとって大きな問題と感じているけれども、この問題について関心を持っている人はどれほどおられるものなのだろうかと考えてしまいます。このような状況で、幅広く意見を得られるのでしょうか。多くの意見を聞きましたというポーズをとって終わりになるのではないでしょうか。
日本産科婦人科学会は、パブリックコメントを求める際に、どのようなソースを活用しているのでしょうか。私には詳しくはわかりませんが、学会のホームページで周知していることはわかります。そのほかに何があるでしょうか。新聞記事内に小さい文字で取り上げられただけではないでしょうか。積極的に知ってもらおうという姿勢に乏しいのではないでしょうか。
新指針案を読んで、6年間にわたって私たちが強いられてきた我慢は、一体何だったのかと途方にくれる日々です。