当院からほど近い場所に、東京逓信病院があります。この病院の小児科部長・小野正恵先生は、長年にわたり、ダウン症候群の方たちの診療を行い、医師として、またときには伴走者として、いろいろな方たちと関わりを持ってこられました。そんな中で、ダウン症候群の人たちの平均余命はだんだんと伸びるようになり、今では60歳を超えるほどになっています。このこと自体は素晴らしいことなのですが、これにともなって新たな問題が生じるようになってきました。なぜなら、これまで長く生きて大人になった後のダウン症候群の方達が、どのように生きていけるのか、どのような健康問題が生じるのか、などといった情報がなかったからです。新たにわかる様々な問題にどう対処するのか、どの診療科が対処できるのか。いつまでも小児科で診療しているわけにもいかなくなって、じゃあだれがフォローするのか。そういった問題に直面するようになってきたわけです。
そこで小野先生は、まずこれまでずっと診てきた小児科の自分が中心になって、複数の診療科や診療部門、支援部門に関わってもらえるチーム作りをして、総合病院の強みを活かして、子どもから大人まで全てのダウン症候群の方をサポートできる体制をつくることをお考えになったわけです。そして院長先生にこのプランについて相談されたのですが、平田院長は東大病院でマルファン症候群の方に複数の診療科が関わるためのチーム作りをされた経験をお持ちで、ちょうどそのノウハウが活かせるとお考えになったそうです。ここで小野先生の情熱と、平田院長の前向きな気持ちが合わさって、昨年10月の東京ダウンセンターの開設に繋がりました。
本日そのお話を伺いに行ってきました。
小野先生は本当に明るくポジティブな先生で、先日のダウン症療育研究会の時にもアクティブに動いておられましたが、このお人柄に接すると、受診する子供たちも親御さんたちも元気を分けてもらえそうだと感じさせられる方です。
今問題になっているNIPTについてもお話を伺いましたが、検査は検査として、きちんと普及させることも必要なのではないかという考えをお持ちのようでした。先日の日本ダウン症協会の声明でもそう感じましたが、やはりしっかりと長年ダウン症候群に関係し、その中で出生前診断の問題と向き合ってこられた方は、検査そのものの存在は否定しないし、個々の妊婦さんの選択も決して否定することはないという見識をお持ちであると感じました。
私たちのクリニックとも近いので、今後も連携していきたいと考えています。