日本産科婦人科学会が出した、“新しい「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」に関するお知らせとお願い” を読んで

さっそく、昨日発表された『お知らせとお願い』を読んでみました。

先走っていた毎日の記事では、新指針の決定は見送る方針と書かれていましたが、そうではなくて、臨時理事会では新指針が承認され、それに引き続き行われた臨時総会で報告し、了承が得られたということです。(ちなみにこの総会というのは、全国の会員から選ばれた代議員によって構成されています。代議員は選挙で選ばれるのですが、この選挙がまた各大学医局・同窓会を通して票のやり取りをするような代物で、理事会の決定が覆るようなことはあり得ないと思われます)

21日づけで厚生労働省母子保健課からの要望書が届き、「審議会を設置し必要な議論を行うので、実施についてはその議論を踏まえて対応されたい」という意を汲んで、ひとまず指針の運用開始を保留するということのようです。

つまり私たちの出した質問状は、無視された格好となっているようなのですが、記者会見に出席されたある記者さんからの情報では、これまでに来た反対声明や公開質問状については「可能な限り修正して反映した」と発言されていたそうです。どこに反映されているのか謎ですが。そして書面で質問や要望を頂いたところについてはこれからお返事や説明をするとの話もあったようなので、何らかのレスポンスが届くのかもしれません。もう少し待ってみる必要があるのかもしれませんが、いつまで待てば良いのでしょうか。

さて、この『お知らせとお願い』なんですが、冒頭から疑問を持たざるをえない内容となっています。曰く、

日本産科婦人科学会(以下、本会)は、平成25年4月より「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(以下、NIPT指針)」に基づいて、NIPTの適切な運用を行って参りました。

ということなのですが、すごい自信ですね。本当に適切に運用されてきたと言えるのでしょうか。ならばなぜ現在のような混乱が引き起こされたのか。すべて、指針に沿わないで検査を実施している非認可施設(この「お知らせとお願い」内の表現です)が一方的に悪者だと言いたいのでしょうか。ならばなぜ妊婦さんたちが大勢流れているのか。ただ無知な人たちが流されているだけだと考えているのでしょうか。

某サイトの情報によると、“非認可施設”にもいろいろ違いはあるけれど、概ね月50件から200件ほどの検査が行われているようです。以前にも書きましたが、このような現状を生み出した原因がどこにあるのか、学会として反省すべきところを見直した上で考えてもらいたいものです。

この新NIPT指針は、リプロダクティブライツの観点から、1)出生前診断に関する正確な情報を示し、妊婦自身の的確な判断の一助なるようにすること、2)妊婦と真摯に向き合い、妊婦に寄り添うことを主眼としています。

それならば、これまでこのことを実践してきた専門家である私たちのことを無視して、分娩施設に限定するという指針案を作成し、そのまま通そうという姿勢は、明らかに矛盾しています。

なんか格好いいこと言ってますが、一体どこが?という疑問が湧きます。

この新指針が実際に運用開始されるまでの間は、従来のNIPT指針に従ってNIPT検査を行うこととなります。すなわち、NIPTの実施を認可されている施設では、今まで通りNIPT検査を続けていただくよう、お願い申し上げます。

だそうですが、では従来の指針に沿って実施施設としての申請書を提出済みでありながら、放置されている多くの施設はどういう扱いになるのでしょうか。

私たちのクリニックは、昨年7月末に申請書を提出していますが、承認とも却下とも修正が必要とも何の連絡もありません。審査が行われた形跡もありません。それ以前に、申請書がきちんと届けられているのかすらわかりません。当院と同時期に申請書を提出している鹿児島大学も同様の状況のようですし、他にも複数の施設が放置されていると聞きます。

いろいろと冷静に考えて対処しなければと思っているのですが、記事を書いているうちに怒りがこみ上げてきました。ちょっと休んで次の記事を書きます。