多くの方が、3D/4D超音波を用いたほうが、一般診療の場で使用されることの多い2D超音波による観察よりも、より詳しく観察することができているとお考えになっているようです。しかし、それはちょっと違います。このポストでは、この誤解について述べたいと思います。
まずは超音波診断の基本について
超音波診断の基本は、2D超音波画像による断層像の観察です。
この検査のメリットは、胎児の体の中身をリアルタイムで観察できることです。
検査を行う者は、妊婦さんのお腹にあてている探触子を操作して、見たい断面を表示することが可能です。しかし、断層像を見慣れていない一般の方にとっては、何が見えているのか、どう見えるとよくてどう見えるとよくないのかなどがわかりにくいので、よくわからないという印象を持たれているのではないかと思います。
これに対して、3D超音波は、2Dの断層像に相当する断面を移動しながら、断面が幾つも重なったひとかたまりとしてデータを得て、このデータ(ボリュームデータと呼びます)を使用して、診断に役立てます。一度得たデータは、後から操作できます(好きな断面を表示したり、表面のみを立体的に表示したり)ので、リアルタイムでなく、後からじっくり観察するのに役に立ちます。検査の種類でいうと、CTやMRI検査に似ている感じです。
4D超音波は、3Dに動きの要素を加えたもので、動きのあるものを観察する際に役に立ちます。
こういった特性から、3Dを診断目的に使用する場合には、まず2Dでよく観察すべき場所を見つけて、その場所のデータを3Dデータとして保管し、後から詳しい検証に用いるという手順になります。胎児の超音波検査の場合、2Dでとくに怪しい部分がなければ、3Dの出番はないといっても過言ではありません。
3D/4D超音波とは?
近年、超音波診断装置の技術開発はどんどんと進歩していますので、いろいろな分野で、胎児ではとくに心臓など循環器の診断などにおいて、3D/4D超音波の使われる部分は増えてきています。しかし、それはごく一部の専門家が、特殊なケースに対して使用する場合に限られます。
産科診療の現場で現在よく使われている3D/4D超音波は、主に表面表示と言われる手法です。
これは、胎児の体の表面の部分のみを画像上に表示するもので、あたかも実際の胎児の体や顔を肉眼で見ているかのような表現が可能になっています。
最近の装置では、ボリュームデータを採取して表示するまでの時間が短縮されてきたので、これを連続して行うことにより、あたかもリアルタイムで胎児の動きを観察できているような表現が可能になりました。
こうして表示される画像は、断層像ではないので、一般の方には大変わかりやすく、実物の胎児を見るような感覚でみていただけると思います。
しかし、胎児の体の内部の構造、臓器のつくりなどは、観察することはできません。このため、体表の形の問題以外は表示されず、診断目的として役に立つ部分は限られます。
産婦人科クリニックで、3D/4D超音波外来という名前で行っているものは、ほとんどこれで、その目的は、胎児の体の詳細な観察、胎児検査・診断というよりもむしろ、わかりやすい形でみて楽しむという側面の方に重点が置かれています。
胎児の異常についてとくに心配がない場合には、妊婦さんやご家族にとって、楽しい経験となり得るでしょう。しかし、胎児になんらかの異常がないかについて心配されている場合に、詳細な観察を行うという目的には、必ずしも合致しているとは言えない検査であることを、理解する必要があるでしょう。