中国における116例の新型コロナウイルス感染妊婦についてまとめた論文が、AJOG (American Journal of Obstetrics and Gynecology: 米国産科婦人科学会誌)に4月17日付で受理され、速報の形で出ていました。実際に冊子に載るときには少し修正される可能性がありますが、内容のキモの部分を紹介したいと思います。
Coronavirus disease 2019 (COVID-19) in pregnant women: A report based on 116 cases
簡単にいうと、、、
A. 研究の目的は?
・新型コロナウイルス感染妊娠116例における、妊婦および新生児の転帰について報告する。
B. キーポイントは何?
・8例(6.9%, 8/116)が重症肺炎に陥ったが、死亡例はなかった。
・妊娠初期または中期の早い段階で発症した8例のうち1例は、自然流産となった。
・妊娠37週よりも前に自然早産となった率は、6.1%(6/99)。
・新型コロナウイルス感染の有無の検査を受けた新生児100人中86人は陰性。
C. これまでにわかっていることに、この論文で新たに付け加えることができる事実は何?
・新型コロナウイルスへの感染は、自然流産や早産の増加のリスクにはつながらない。
・妊娠末期に新型コロナウイルスの感染症状が出た場合に、胎児への垂直感染が起こった事実はない。
とのことです。
2020年1月20日から3月24日までの間に中国の25の病院で新型コロナ肺炎の診断を受けた妊婦116例が調査対象となりました。
垂直感染の証拠を掴むために行われた検査は、羊水、臍帯血、新生児の咽頭ぬぐい液を用いて行われました。
分娩した99例中21例(21.2%, 21/99)は早産でしたが、そのうち破水による自然早産は6例でした。新生児呼吸不全のために1例が新生児死亡となっています。
以前に紹介した論文
妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 1: 108例のまとめ – FMC東京 院長室
と、重複しているケースが結構あるんじゃないかと思います。
詳しくはみていませんが、新生児死亡のケースは同じケースではないでしょうかねえ。
現時点では、やはりあきらかに胎児感染が起きたということがはっきりしたケースはなく、このあたりは、少し前に話題になったジカウイルスとはだいぶ違う印象です。
少なくともこれまでにわかっている情報からは、胎児に関しては特別な検査や確認事項の追加は必要なく、妊娠管理に関しては無症状の場合には通常の妊婦と同様の管理が可能(もちろん、他の妊婦や医療スタッフへの感染対策などには、細心の注意が必要)で、症状がある場合には症状に応じた管理を行えば良いと考えて差し支えないようです。